ブラックアウト・ガーデン

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「で、こうやって駒を作ってやった」 そう言って彼が手のひらを上に向けると、ゆっくりと馬の頭の輪郭が形作られて真っ白なチェス駒になりました。 「君は、その、何でも作れるの?」 初めて見る光景に戸惑いながらも、もはやここで何が起きても不思議ではないことに気づいて彼に聞いてみました。 「イメージできればね。これだってあいつが散々注文つけてやっとできたんだ。ナイトって言うんだろ、これ」 「たぶん」 「で、これが二つ必要だって言うんだぜ」 「作ってあげればいいじゃない」 僕がそう言うと、彼は心底不思議そうな顔をしました。 「同じものが二つできるわけがない」 「そんなことも分からないから、時間なんてものを信じるんだな」 彼は小馬鹿にしたように言いました。 「時間なんてない。瞬間がたくさんあるだけだ」 *** 「楽器って何か作れるの?」 僕がそう言い出したのは、環境音すら無いこの世界に言いようのない不安を覚えたからでした。 「楽器?」 「あのチェス駒みたいに」 そう言うと、彼は黙って先ほどと同じように手のひらを上に向けました。 それから、1分もしない内に縦笛のシルエットが浮かび上がってきます。 「こんなのとか」 何度見ても不思議な光景に目を奪われていると、彼は僕にその笛を差し出しました。 「ほら」 僕は恐る恐るそれを手に取ります。 その雲のような軽さ以外は、小学生の時に使っていた縦笛の記憶とほとんど一致しました。 吹き口に唇を付けて、勢いよく息を吹き込みます。
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