ブラックアウト・ガーデン

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「母親はその後、あらゆる脳外科を片っ端から受診したそうです」 「次々と下される異常なしという診断とは裏腹に、母親の不安は日に日に増していきました」 「そして、『この子は私の息子ではない』という強迫観念に囚われるようになったと」 「姿かたちは変わらない、外科的診察でも異常はなく健康そのもの。」 「それでも、彼女の疑念は確信へと変わっていった」 「私にそれを伝えて間もなく、彼女は来人の元から消えました」 「それ以来、私が彼の後見人になったわけです」 「そして、彼と接する内に私は彼の母親と同じ種類の確信を得るに至りました」 「その理由を言葉にするだけの表現方法を持ち合わせていなかった点もまた、彼女と同じでしたがね」 「一般的な語彙で言うと、彼は魂が抜けていた状態」 「事故の衝撃により陥った『体外離脱状態』と言った方がいいかもしれません」 「『スワンプマン』という話をご存じですか?」 「……いえ」 淡々とした語り口に混ぜられた突然の問いかけに私はハッとする。 「ハイキングに出かけたある男が、不運にも雷に打たれて死んでしまうという話です」 「その時、すぐそばの沼にも同時に同じように雷が落ちた」
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