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「そして、雷の放電により沼の成分が化学反応を起こし、偶然にも死んだ男と全く同じ構造物・生命体を生み出した」
「新しく生まれた存在『スワンプマン』は死んだ男と同じ記憶を持っており、昨日と同じ家に帰り次の日には同じ職場に出勤する」
「刑事さんは、ハイキングに出かけた男とスワンプマンは同一人物だと思いますか?」
「……思いませんね」
「同感です」
「では、この両者の違いとは何でしょうか?」
「私の言う『魂』とは、それのことです」
「話を戻しましょう」
「彼には二つの記憶があったのです。一つは階段で事故に遭った後、何事もなく回復した肉体の記憶」
「もう一つは、肉体から分離した魂の記憶です」
「それに気づいたのは、彼がもう一つの記憶を書いたこのノートを見た時です」
「私はその時、バグの原因を発見したプログラマーのような気持ちでした」
「このノートに現れた『虚の人格』を殺すことこそが、彼に対する治療であると、そう思ったわけです」
「それからは、彼がこのノートに記憶を書き加える度に私の目の前で塗りつぶさせました」
「私の目論見通り、彼の魂はこの黒いインクに溺れて死んだ」
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