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声の方向に視線を上げると、そこには僕と同じように全身が半透明の輪郭で覆われた人の形をしたものが立っていました。
目を凝らしてみても、その表情はぼやけて判別できません。
「あ……!」
声を出そうとして僕は悶絶しました。
音を出すために意識して空気を吸うと、途端に呼吸が上手くいかなくなったのです。
僕は喉元を手で押さえて必死にコントロールしようとしました。
「ああ、ダメダメ。いきなり喋っちゃ」
得体の知れない何かが発する声を聞きながら、僕は懸命に呼吸を整えようとします。
そんな中、だんだん意識が覚醒してきたのか、様々な思考が僕の脳をめぐりました。
このままでは死んでしまう。死ぬ?僕は今生きているのか?ここはどこで、目の前にいるコレは何だ?
そうだ。さっきまで僕は学校にいた。階段で転んだではないか。僕は死んだのか?それとも、今まさに死んでいるのか?
僕が悪戦苦闘している間に、人の形をしたものが僕にくっつくぐらい顔を寄せました。
その時、初めて彼の目や口がうっすらと見えましたが、それは陰影だけで色がありませんでした。
「俺の真似をするんだ。いいね?」
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