秘密事

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秘密事

今日も残業をして、マスターのいるバーに向かう。 東郷さんが出勤してくる23時前。 店内には、お客さんが居なかった。  カラン… 「いらっしゃいませ…おや、聖華ちゃん」 「マスター、こんばんは」 優しく微笑んでくれたマスターの真ん前に座る。 東郷さんとホテルに行ったあの日から、何度かここに足を運んでいた。 マスターには、東郷さんとお付き合いを始めたということも、きちんと2人で報告もしている。 「聖華ちゃん、和孝くんから聞いていると思うけれど。今日から明後日まで、彼はお休みだよ」 「…え?」 「おや、聞いていないのかね…」 マスターによると、お休みの理由は『本業の都合』らしい。 「…東郷さんの本業って何ですかね」 「僕も知らないんだよ。…彼女になった聖華ちゃんも知らないんだね」 「はい…」 東郷さんとは『お互い何も知らない』状況でお付き合いを始めたけれど、あまりにも知らないことが多すぎる。 まず東郷さんと2人で会えるのは、バーでの勤務が終わってから長くて朝方まで。 ホテルに泊まっても、私が目覚めると絶対にいなくなっている。 昼間は『本業』と言って、一切会えない。 そして、その本業が何かも分からない。 あと、まだ連絡先の交換も出来ていないし。
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