九内晴廉という男

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   シャワーを浴びて部屋に戻るなり、ふかふかのベッドにゴロンと寝転がる。  借りたスウェットからはセレンの匂いがした。  両手を顔の前にかざすと、トレーナーの袖から少しだけ指先がはみ出している。  わたしが着るにはかなりサイズが大きい。  肩だってブカブカだし、丈も太ももくらいまである。   明らかに女のわたしが着るための服じゃない―――なんて。  さっきから余計なことを考え過ぎだ。  セレンの言う通り、今日は相当疲れているんだろう。  すぐに寝たほうがいいんだろうけど、目が冴えて眠気がやってくる気配はしばらくなさそうだ。  だらんと両手を伸ばし、天井にぶら下がったティファニーブルーのシャンデリアを眺める。    セレンは、いつもとまったく変わらない様子だった。  友達とはいえ、異性と同じ家で生活することについて何の抵抗も感じていないらしい。  きっとわたしがセレンを男だと思っていなかったように、セレンもわたしを女だと思っていないんだろう。  セレンのその感覚が正しい。  わたしが急におかしくなってしまっただけだ。    明日から二人での生活が始まる。  いちいち相手を意識をしていたら確実に身が持たない。  小さなことであたふたするのは、わたし自身に恋愛経験がほとんどなく、男の人と深く関わってこなかったせいだ。  この生活が続けば、そのうち慣れてすぐにまた元の感覚に戻るだろう。  よいしょとベッドから起き上がる。  寝る前にもう一度顔を洗いたくなって、バタバタと部屋を出た。
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