ふたりは友達

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 黙って見ておかないといけない立場って一体、何のことを言ってるんだろう。  セレンの言葉は時々、わたしには理解ができない。  これまでは意味が分からなくてもサラッと流して付き合ってきたけど、今のわたしは違う。  セレンが何を言わんとしているのか凄く知りたい。  けれどこの場で聞いたところで、上手くかわされてしまうのは目に見えている。  言いたいことがあれば、はっきり言うタイプのセレンがあえて言わないのは言いたくないからだ。  そこから上手く話を聞き出すスキルはわたしにはない。  となると今、わたしにできるのはさっきからひたすらドキドキと胸を叩く鼓動を抑えることだ。  スウェットの胸元をギュッと掴む。  セレンは心配そうにわたしの顔を下から覗き込んだ。 「大丈夫?」 「大丈夫だよ、ありがとう。何もないの、気にしないで」 「そう、食い過ぎかと思った」 「まだそんなに食べてないよ!」 「いっぱいあるから好きなだけ食べたらいいよ」  いつもの穏やかな表情に戻ったセレンが、丁寧な手つきでお箸を取る。  わたしはスマホのディスプレイをタップして、ラインのメッセージを開いた。 『おはよう! 今朝は面白いニュースが流れてるね。今日はセッションに行く? 良かったら一緒に飲もうよ』  「大ヶ谷さん、今日のセッションで一緒に飲もうだって。今日ってセッションなんかあったっけなあ……?」  ライブハウスのホームページにアクセスすると、イベント告知の欄には初心者向けのセッションライブと記載がされている。  わたしは首をひねった。 「初心者向けのセッションか。わたしはともかく、大ヶ谷さんが行っても面白くないはずだよね。何で誘われたんだろ」 「知ってる場所だったら、いろ巴が来やすいからだろ。あとは……まあ、いいわ」  セレンは面白くなさそうに、だし巻き卵を割って口の中に放り込んだ。 「どうしようかなぁ。せっかく誘われたし行ってみようかな。初心者向けのセッションなんて何年ぶり?って感じだけど」 「おれも行くよ」 「セレンも?」  思ってもみなかったセレンの反応に、わたしは身を乗り出してテーブルに両肘をついた。 「セレンが初心者向けのセッションに参加したら、それこそ皆がびっくりしちゃうよ。何でいるの!?ってなるじゃん」 「バーカンの端っこで黙ってたら分かんねぇだろ」
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