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ステージの演奏が終わり、店内が熱気と拍手に包まれる。
耳が割れそうな歓声が上がる中、何とかしてセレンの強引な提案を断ろうと頭を捻ったけど無理だった。
わたしが何を言っても意見が通る気がしない。
「ほんとに一緒に住むの? 言ってること、めちゃくちゃだよ。分かってる?」
「それでは次の演奏者の発表です! ベース、セレンさーん!」
ステージの司会者が次の曲で演奏するミュージシャン達の名前を呼んでいく。
セレンの名前が上がると、大きな歓声が湧いた。
「え、このタイミングで順番が回って来たの?」
わたしの声が届いていないのかセレンは無言でタバコの火を消すと、バースツールから立ち上がり、カウンターに立てかけてあったベースケースを肩にかけた。
背の高いセレンの後ろ姿を見上げる。
「キーボード、いろ巴さーん!」
「わたしも!?」
今日のセッションライブの参加申し込みはしていなかったはずなのに。
戸惑っていると、セレンはくるりと振り返り手を差し出した。
「ほら」
「何よ」
「来いよ。後悔はさせないから」
優しく、穏やかな声が耳朶を打つ。
鼓動が早くなった気がしたけど、それは気のせいだ。
ふい、と顔を背けると、セレンに強引に手首を引っ張られ、無理やりステージへ向かわせられる。
セレンの大きな背中を追いかけながら、抵抗できないわたしがどこかにいることを認めざるを得なかった。
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