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陽が落ちた紫色の空の下、わたしは幼稚園の近くにある樹木に囲まれた人気のない公園を訪れていた。
いつもよりも園児達とたくさん遊んで疲れきった身体を錆びたブランコに預けて、ショルダーバッグから出したばかりのスマホを眺める。
どんな返事が来ていても大丈夫―――そう自分に言い聞かせて、サイドボタンに添えた親指に力を入れた。
画面が明るくなり、見慣れた白いくまのキャラクターがホーム画面に映し出された途端、不在着信を知らせるショートメッセージが届く。
「着信のお知らせ……12件?」
思ってもみなかった連絡の量に驚いている間に、ラインのプッシュ通知も表示されわたしは画面をタップした。
『どこにいんの?』
『連絡ちょうだい』
セレンからのメッセージが目に飛び込んでくるなり、心臓を冷たい何かで鷲掴みにされたような気分になる。
凄く心配してくれていたらしい。
きっと仕事の合間を縫って何度も連絡をくれたんだろう。
すぐにでも会いたい。
顔が見たい。
次々と湧き上がる思いのたけを押し込むように唇を噛みしめる。
無愛想に浮かぶ文字の向こうにセレンがいると思うと、いてもたってもいられなくなった。
セレンからの返事はもっとあっさりしたものだと思い込んでいた。
これなら、「勝手に出て行ってごめんね」と一言謝れば、またいつもの関係に戻れるかもしれない。
ばかな話で笑い合って、毎日楽しく過ごせるならこの場で簡単にごまかしてしまいたい。
そんな考えがちらつき始めたところで、わたしはスマホを伏せて漆黒の滲む空を見上げた。
軽く地面を蹴ると、ブランコからきぃと掠れた音が鳴る。
さっき温まったばかりの胸の奥が少しずつ削られていくみたいだ。
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