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「そうだったの……」
知らず知らずのうちに緊張していたのか、肩の力がすぅっと抜けていく。
てっきり、セレンと彩世さんは身体の関係があるものだと思っていた。
二人の間には何もなかったなんて。
どうしよう、凄く嬉しい。
意図せず口角が緩んだところで、タイミング悪くセレンの手のひらが離れていく。
ニヤついた顔が丸見えになるのが嫌で、すぐに自分の両手で鼻まで覆い隠した。
「で、どうぞ」
「何が!?」
「さっきの続き。本当はセレンが……何?」
「な、何って」
「おれのことが、何なの?」
セレンは悪戯な上目遣いで、わたしの顔を覗き込んだ。
可愛い……と呟きそうになったところで、セレンの肩を全力で押し返す。
わたしが何を言おうとしていたのか、もう気付いているらしい。
「ばか! やだ、絶対に言わない! 正直になろうと思ったけど、やっぱりやめたぁぁあ!」
子どもみたいに楽しそうに笑うセレンの声を背に、半分叫びながらソファの端に向かって逃げようとした途端、手首を引っ張られる。
想像以上に力が強くて、抵抗する暇もなくセレンの胸の中に飛び込んだ。
「セレン……?」
状況が飲み込めないまま顔を上げる。
セレンはわたしの耳元に鼻先をすり寄せると、掠れた声でゆっくりと囁いた。
「いろ巴、好きだよ」
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