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穏やかな手つきが心地良くて目を閉じると、そのまま頭の後ろを包み込まれて引き寄せられた。
少し強引に唇が重なる。
角度を変えて、何度も何度も落ちてくるキス。
なんて幸せで、心地いいんだろう。
このままずっとこうしていたい。
もっと近くに感じたい。
セレンの背中に伸ばした腕に力を込めた。
唇が離れ、わたしの首元にセレンの頭が埋まる。
熱い吐息がかかって力が抜けた瞬間、ソファにそっと組み敷かれた。
「セレ……?」
驚きながら視線を上げると、すぐ目の前には見惚れてしまうくらい綺麗に整ったセレンの顔があった。
それから、緩いウェーブのかかった艷やかな黒髪の間から覗く、穏やかな漆黒の瞳。
でもその瞳からはいつもの静けさが消え、代わりに渇いた光沢を称えてわたしを見下ろしている。
身動きが取れないのはこの瞳のせいなのか、この体勢のせいなのかどっちなんだろう。
熱くなってぼぅっとしてくる頭を軽く振り、ちらりと視線をそらすと、わたしに覆いかぶさるセレンの身体が視界に飛び込んできた。
「ちょっと待って」というわたしの声は、セレンの口内にあっけなく呑み込まれていく。
訳が分からない。
夢中でキスに答えていると、唇を割って熱い何かが入ってくる。
口内をくまなく舐められたところで、これがセレンの舌だと気が付いた。
恥ずかしくて力の入った舌を、ゆるゆると絡め取られる。
強引なのに優しいキスを繰り返されて、頭がおかしくなりそうだ。
酔いもほとんど覚めているはずなのに、全身がピリピリとしびれて、経験したことのない変な感覚が身体を支配している。
もしかすると、わたしはすでにおかしくなってしまったんだろうか。
絶対、そうに違いない。
セレンの唇が頬や首すじを辿って降りていく。
触れられた場所がくすぐったくてたまらなかった。
それなのにもっと続けて欲しくて、セレンをぎゅっと抱きしめる。
セレンはわたしの着ているトレーナーの襟の縁をなぞるようにキスをしたあと、耳元で吐息混じりに囁いた。
「ここから先にもキスしたい」
これってもしかして―――わたしの予想は、多分間違っていないと思う。
でも、セレンからの誘いは嫌じゃなかった。
むしろ嬉しかった。
まるで、その言葉を待っていたみたいに、わたしの鼓動が弾んでいる。
不安がないと言えば嘘になるけど、今ならセレンの気持ちに答えられる。
きっと、大丈夫だ。
一度大きく頷くと、セレンはわたしを強く抱きしめた。
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