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セレンは吹き出すと、後ろに両手をついた。
おかしくてたまらないといった表情を浮かべながら明るい笑い声を上げている。
「わ、笑わないでよ!」
「ごめん。そう来るとは思ってなかったから」
「セレンが乱暴とか言うからじゃん。びっくりした」
「乱暴にはしない。優しくするよ」
「それがいいよ。雑に扱ってると、すぐに壊れちゃってもったいないもん。せっかくふかふかで気持ちがいいのに」
「今の、ベッドのことだと思った?」
セレンの言葉に、緩みかけていた頬が強張る。
ベッドの扱い方の話をしているんじゃないとしたら、この言葉の意味はもしかして―――目の前に広がる、ホイップクリームみたいなシーツをぐるりと見回した後、小さく喉が鳴った。
「また緊張させたかな」
セレンの人差し指がわたしの頬をとろりと撫でる。
「き、緊張っていうか……」
「さっきもおれ、夢中だったから。いろ巴は初めてだったのに、ごめん」
「謝んないでよ、嬉しかったんだからさ。あれ? でも、何でキスが初めてだって分かったの? わたし、話したことないよね」
「慣れてなさそうだったから、多分そうだろうなと思って」
「鋭いなあ。そうだよ、前にセレンの車で話した人とは何もなかったんだよね」
「……ふぅん」
セレンはわたしの頬を撫でるのをやめ、面白くなさそうに顔をそらした。
突然の素っ気ない態度に、セレンの顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「他の男とどうだったかなんて、聞きたくない」
「うわ、ごめん。でもほら、セレンだってわたしと出会うまでは、周りに色々な女の子がいたんでしょ? わたしも付き合ってたのは、セレンと出会う前だもん。そういうのは仕方がない部分もあるというか」
「誰かを好きになったのは、いろ巴が初めてだよ」
セレンは膝立ちになって、わたしを見下ろした。
ポン、と軽く肩を押され、流されるまま身体がベッドに沈む。
「え……?」
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