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「出て来ないの?」
「出て来ない!」
わたしは裸のまま、近くにあった白いカシミヤのブランケットを頭まで被り、ベッドのどこかで散らばっているであろう下着を手探りで探した。
ブランケットの外から、悪戯好きの子どものような笑い声が聞こえてくる。
「顔くらい出したらいいのに」
ばか言わないでよと心の中で悪態をつく。
自分でも知らない一面を暴かれて乱れまくった後、一緒の空間にいることすら恥ずかしくて耐えられないくらいだ。
言い返そうとしたけど、「恥ずかしい」なんて口にする方がもっと恥ずかしいことに気が付き、無言でブランケットの外に出した腕を動かす。
「恥ずかしがってんのも可愛いけど」
「全然恥ずかしくないし」
「じゃあ、これもう良くない?」
ブランケットがめくられそうになり、わたしは慌てて内側から腕で押さえつけた。
「だめだめ! セレンだって、まだ何も着てないでしょ!? お互いのために、その、見ないようにするのがいいと思うんだよね」
「下は履いてるけど。それにもう見たし、さっき」
「さっきはいいけど今は嫌なの!」
丸めた身体をイモ虫のようにもぞもぞと動かし、セレンから離れる。
また笑い声が聞こえてくるけど、わたしには知ったことじゃない。
「ベッドに変な生き物がいる」
「うるさいな」
「あ、これいろ巴のかな」
「どれ!?」
ブランケットから勢いよく顔を出すと、肘をついて横になっているセレンの姿が視界に飛び込んできた。
上半身は何も身に着けていないせいで、キメ細かい肌がフロアライトの淡い輝きに照らされてつやつやと光っている。
まったく眩しくないのに、どういうわけかやたらと眩しい。
セレンが緩やかに唇を持ち上げると、蠱惑的な甘い香りが漂った―――ような気がする。
「ほら、靴下」
セレンは、わたしの黒い靴下を1枚つまんで持ち上げた。
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