別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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それは、昼休み。 会社近くのカフェで2人ランチを共にしていた時のこと。 夜、恋人モードになればお互いに遠慮がなくなるのは目に見えている。 昼、会社の先輩後輩であれば、まだ制御が効く。 「夜、大事な話がしたい。俺の家でも、杉田さんの家でもなくて。」 「いいよ。じゃあ、19時にレストラン予約しておく。」 他人の目があればお互い冷静でいられる。 夕実の頭には、まだ淡い期待があった。別れたい、別れたいと口にはしつつ、3年一緒にいる彼氏を手放すとなればやはり寂しいのだ。 それに夕実にも直哉に伝えたい大切な話があったし、それがきょうで、しかも直哉からと言われたのだ。 直哉の口から、浮気を謝る言葉が出てくれば、許そうとも思う。許すしかないとも。 探偵(つまり、俺)から預かっている証拠の写真は、データもプリントアウトしたものも消してしまえばいい。 夕実の記憶からもなかったことにしてあげることも可能だ。 夕実が優位に立ってことが進むなら、“別れ”を回避しても構わない。 比嘉結菜という障害が、もしかしたら2人の絆を結び直すために越えるべきものだったのかもしれない。 ランチはショートパスタを食べていた。 ならば夜はイタリアンはやめよう。 新しくできたマレーシア料理の店、もしくは美味しいと評判のチェコ料理の店にしようか……。 外食をする際、外国の料理が食べられる店を選ぶのは直哉に新婚旅行の行き先を意識させるため。
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