別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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夕実は過去に何人もの未成年を餌にして男の性欲で荒稼ぎした。 いちばん酷い扱いをしたのは、“ユキちゃん”。 不衛生なボロアパートにも、ゴミ屋敷にも運び込み、どんな男の相手もさせた。 自分が今、その立場に立たされそうになりわかる。 15歳の大人になりかけの子どもが、見ず知らずの不潔な男性を相手に股を開き、肉棒を押し込められ、欲を吐き出されたのだ。 20歳の夕実は、親の借金返済のため性風俗に足を踏み入れてしまった“ユキちゃん”に、この世の地獄を味わわせ、金を貪り取った。 どれほどの恐怖の中で彼女は息をしていたのか。 「…ごめんなさい。」 「あ?客取りたくないとか言う気か?」 杉田夕実の瞳が潤み、涙がボロリと溢れた。 「…ユキちゃん、ごめんなさい。」 涙は傷に染みた。 杉田夕実は思った。消せない過ちは確かな罪で今の状況が与えられた罰であるなら受け入れるしかないのかと。でも、抗えるものなら許しを乞いたい。 「ごめんなさい。ごめんなさい。」 泣き崩れる夕実の腕を新沼が掴んで立たせる。 「新沼さん、運びますー。」 ドライバーが夕実を迎えに来た。新沼が夕実の背中を暴力に近い力で押した。 「ほら行け。泣いてんな、ババア。過去の罪は簡単に消えねえからな。」 夕実は、おぼつかない足取りで歩き玄関にある夏向きの華奢なサンダルを履いた。 あまりにもふらついている夕実をドライバーが支える。 「酒が手放せない女だから、気をつけてやれ。すぐ転ぶからな。」 顔や身体の怪我の言い訳のように飯沼が言い放つ。 ドライバーは、夕実に対しかわいそうとも気の毒とも思わずそのまま車の後部座席に押し込んだ。
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