別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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アパートに迎えの車が来たのは早朝5時だった。 「ゆみたん、かわひいね。気に入ったから指名ふるれ。」 客の男がこの日、夕実を迎えに来たドライバーに支払ったのは12万円。男には金だけはある。 「はい、次回もお待ちしています。」 夕実を迎えに来たのは新沼だった。 新沼は、夕実に優しく接するつもりは微塵もない。唾液に精液と血液で汚れた夕実の体を後部座席に押し込めた。 「なあ、なかなかの太客だな。この調子で頼むわー、ゆみたん。次回ご指名だってよ。おめでとう。」 新沼は、運転しながらほくそ笑んでいる。 夕実はルームミラーを睨みつけ痛む下腹部と尻を指で押さえ込んでいた。 「ニ度といやよ。あんな人。汚くて気持ちが悪くて。絶対にもう、嫌よ。お願い、断ってよ。」 夕実は、不潔な光景を思い出し、自らの体を掻きむしった。 「いや断れないな。」 「…え。」 「こんなに金払いのいい客、断る理由がないだろ。それに、ゆみたん気に入られてるし。」 「本当に嫌なのよ!!変態なの。不潔なの。乱暴なの。汚い爪で中引っ掻くのよ。お尻にも無理やり入れるから切れたのよ。病気になっちゃうじゃない!!」 後部座席に座る夕実が運転席の背もたれを両手で力強く叩いた。 赤信号で停車した新沼は、助手席に用意しておいた缶のハイボールを夕実に投げつけた。 「痛っ!なにすんのよ!!」 「病気は自分で予防しろよあばずれ。あー、今時の言い方だと、ビッチか。」 「なんなのよ!!それ!!」 運転席の背もたれを力いっぱい蹴り上げる夕実に新沼はため息をついた。 「お前は未成年をもっと酷い地獄に落としただろ。 それにお前は、借金のカタなんだ。お前の体はお前のものじゃないんだよ。」 新沼の言葉に夕実の怒りは頂点を超える。 「ぁあああ!!ぁぁぁああああ!!!」 大声を上げ後部座席の窓を腕で激しく叩いている。皮膚が切れて血が飛んだ。 ーーー新沼が私の過去を知っている。なぜ?もしかして、誰かとグルになって私を陥れているの? そう思えば、ますますおもしろくない。 「おい、やめろ。」
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