別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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新沼は開店前の電気店の駐車場に車を停め、夕実を乱暴に引き摺り下ろし口元を蹴り上げ腕を踏みつけにした。 「ギャァアァァア!!」 ーーー幸乃はあの客にも他の客にも散々やられたんだ。このババアには、まだ地獄が足りねえ。 「暴れられねえように。折ってやろうか。あ?なあ、お前なにか勘違いしてんじゃねえか?ん?」 踏みつけにした腕から足を外し、その足で夕実の鳩尾を蹴り上げた。 「暴れてなんとかなるのは2歳児までなんだわ。お前なんかな、誰にも必要とされてねえんだから。不潔でも乱暴でも気に入ってくれた客がいるだけ御の字だと思えよ。使い古した性器で稼げんだから感謝しろよな。」 夕実の意識が遠のき始めている。 「俺に言わせれば、お前がいちばん不潔で気持ち悪い。」 新沼は、気を失いかけている夕実をこのままここに捨てていくわけにもいかず、再び後部座席に押し込んだ。 夕実に不潔な客をあてがっているのは篠木由治にそうするように言われているからだ。 新沼はデリヘル店オーナーでありながら、日中はポンドホームズに在籍し篠木由治の下で住宅デザイナーをしている。 新沼のデリヘル店は篠木由治により9年前の比嘉結菜(数原幸乃)の一件以来、深池組直営となっていた。 本来はクリーンなデリヘル店であるため、レギュラーのキャストは清潔なラブホテル限定のデリバリーを続けている。 自宅希望の客は衛生面などに危険があるため断り続けていたが、篠木由治の命令で杉田夕実については、他のデリヘル店で出禁となっている危険な客の自宅に運ぶことになっている。 杉田夕実が息も絶え絶えに体を震わせ涙を流す姿を見ても、新沼には杉田夕実に対する同情の感情は湧いてこなかった。
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