別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

108/142
前へ
/143ページ
次へ
唐沢直哉が、杉田夕実との離婚を辞めると言い出した。 理由こそ言わないが夕実と離婚すれば比嘉結菜を裏切ることになるとか、そんなくだらないことを考えたのだろう。 杉田夕実が唐沢直哉の代わりに厳しい取り立てに合っているのかもしれないのに、夕実の部屋で落ちている歯を見ながら、直哉は確かに口の端を上げていたのだ。 夕実の自宅には、警察の捜査が入った。 ベッドに染み付いていた血液や歯は、DNA鑑定中だ。指紋は杉田夕実のものの他にもうひとつ採取されていた。 生活安全課から連絡が来て暴行や誘拐事件とするかは現在検討中だと教えられた。 行方不明ではあるため、捜索願を出せば警察も出動することにはなるのだが、それについて唐沢直哉はまだ躊躇いがあるようだった。 「澤木さんから見て、夕実ってどう見えました?」 「え、ヒステリック。」 「……良かった。俺だけじゃ無いんだ。」 「ん?」 唐沢直哉が深くため息をつく。 てか、そんなこと聞いてどうるんだよ。 「俺、夕実のこと、初めから見抜いていたらなって、そう思うんです。」 「あ?」 それはお互い様じゃない?お前もお前でギャンブル狂だし、借金しまくってるし。 「俺と付き合ったから夕実は、ヒステリックが酷くなったんだと思います。」 「あーそう。ふーん。…。」 唐沢直哉が、しゅんとした顔をした。 「あ。興味ないですよね。失礼しました。」 「…聞くよ。話したいんだろ。」 仕方がないからコーヒーを2つのマグカップに注いでテーブルに置いた。 「まー、飲めよ。」 「ありがとうございます。」 俺が勧めるまま、唐沢直哉がコーヒーを口にした。 「で?」
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加