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「本音を言えば、夕実とはもう関わりたくない。」
「じゃあ、なんで離婚しないの……。」
「婚姻関係にあるからこそ、できることがある気がして。」
「なんだよ?」
「今のとち狂った夕実があっさり離婚に応じるとは思えないんです。」
まあ、一悶着あるだろうな。
「ゆいちゃんの店でまた見境なく暴れたら嫌だし。」
杉田夕実が比嘉結菜の店で暴れた件は警察沙汰にはなっていなかった。
比嘉結菜の周りの人間も警察に通報はしなかったのだろう。
「本当、比嘉結菜のことばっか。どんだけだよ。騙されてんじゃん。借金させられてんでしょ?そんなにいいの?」
「…はい。優しいんです。俺に。」
比嘉結菜の上辺だけの優しさに騙されてないか?
「なあ、その…直くんに向けた比嘉結菜の優しさはさ、杉田夕実抜きで成立すると思う?
杉田夕実への復讐に、利用されてる状況わかってる?2年も騙され続けて。ギャンブル狂なのも利用してるわけでしょ?借金2000万ってどんだけよ。」
何を持ってして比嘉結菜を信じたい気持ちが湧いてくるのか俺にはさっぱりわからない。
「……夕実の貯金は、誰の金だと思います?全部じゃないけど一部は、ゆいちゃんが体ボロボロにして稼いだ金なんですよ。
夕実に奪われた分、取り返してあげたいって思ったんです。ゆいちゃんが苦しんだ分、夕実だって苦しむべきだ。」
比嘉結菜に対し唐沢直哉は、初めは体だけの関係を求めていたはず。何度も会ううちに、比嘉結菜の過去を知り、情が湧いてしまったのだろう。
情が湧いて…可哀想だから守ってあげなきゃって思ったんだろうな。
「ま、コーヒー飲んで。直くん。」
“夕実だって苦しむべき……。”
キツイな。比嘉結菜に対する気持ちと真逆だ。
唐沢直哉は杉田夕実に対しては人としての情のかけらもなくなってしまっている。嫌いだから仕方がないのか…。
浮気相手に完全に本気だ。比嘉結菜は、唐沢直哉に本気になどなるわけがない。なれてせいぜいセフレ。それでも好きだと思えるなんて。唐沢直哉は比嘉結菜の杉田夕実への復讐を目的に組織ぐるみで利用された。
「だけど離婚しないと、杉ちゃん風俗に売り飛ばされちゃうかもよ?」
唐沢直哉が口の端を上げた。
「尚更いいじゃないですか。婚姻関係もなかなか利用できるものですね。」
え?何?
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