別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「新沼っちー?」 心配そうについて来た“まりさん”が、新沼の腕を引いた。 「まりさん、これから泊まりだから休んでてな?」 「オバサンのこといじめすぎじゃね?死んじゃうよ?」 夕実は、“まりさん”に心配されている自分に苦笑いをした。こんな無価値な女に心配されるなら、死んでしまったほうがマシだとさえ思ったのだ。 「ふふ、何様よ。」 「あ?」 新沼は夕実の全ての発言が気に入らない。新沼にとって“まりさん”を含め、自分の店のデリヘル嬢たちは、家族のような存在でかわいいキャストたちなのだ。 新沼にとって夕実は単なる預かり物で、不要な粗大ゴミだった。 「ふっ、クソ女。偽善もほどほどにしなさいよ。」 「ああ!?」 新沼はよほど頭に来たのか、シャワーを最大限の水圧で捻り出し、冷たい水を夕実の鼻と口に浴びせ息の根を止めようとする。 「新沼っち、マジでおぼれちゃうから!!」 新沼は止めに入る“まりさん”の手を払いのけることは流石にできず、夕実から手を離す。 浴槽にもたれかかり口や鼻から入った水を垂れ流している夕実。 ゲホゲホと咳をしながら、息を整えた夕実が新沼に掴み掛かった。 「殺すなら殺しなさいよ!!!!」 夕実のその形相と叫び声に新沼が激昂するかと思いきや 「もう、やめてよー!!」 その場に泣き崩れパニック状態に陥った“まりさん”によって、新沼の衝動は抑えられたのだった。
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