別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「え。」 「杉田夕実さんですか。警察です。生活安全課から参りました。野尻(のじり)と申します。」 警察官の制服姿の男が夕実に警察手帳を見せれば、その奥にも警察官がいるのを確認した。 「…警…察………。」 夕実には、思い当たる節がある。売春防止法違反だ。性風俗店では性器の挿入は、違反行為となる。罰せられるのは客ではなく店側となるのだ。 夕実は、こんなことで警察に捕まるのは割に合わないと思った。 「何よ!!捕まえるなら私じゃないわよ!!違うわよ!!!」 夕実が騒ぎ立て始める。 「杉田夕実さん、落ち着いてください。」 「なんなのよ!!何で警察が!!!誰が私を嵌めたの!?私、何もやってないわよ!!!」 「杉田さん、中でお話ししましょうか。」 中に入るように促す警察官の野尻に夕実がはっとする。 「わかった!詐欺でしょ!!詐欺だ!!!絶対そうよ!!詐欺なんでしょ!!!!」 警察官の野尻も手がつけられないような状態で騒ぎ立てる杉田夕実。 「落ち着いてください。詐欺ではありませんし、あなたは逮捕されません。」 「…え。……じゃあ、何?私になんの用なの?」 警察官の野尻が夕実に紙を見せた。 「あなたに行方不明の捜索願が出てます。唐沢直哉さんからです。あなたの旦那さんですよね。」 「……直哉。直哉…直哉が…。」 杉田夕実は、捜索願の届出書を持った警察官の野尻の腕を両手で掴んでボロボロと涙を流して、その場に崩れ落ちる。 「あなたも旦那さんの唐沢直哉さんも深池組という反社会的勢力に目をつけられている……と、お節介な探偵から垂れ込みがあったんです。 お節介な探偵があなたがヌキヌキJAPANにで在籍されている可能性があると、通報してくれました。見事的中でしたね。」 だが、夕実には警察官の野尻のその言葉はあまり届いていない。 唐沢直哉が自分の捜索願を出していたことが余りにも大きく感じ他のことはどうでも良かったのだ。 ーーー今すぐ直哉に会いたい。 その思いだけが夕実の頭の中を支配していく。
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