別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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直哉の来ないマレーシア料理店のテーブルで夕実は探偵(つまり、俺)から預かった数枚の写真を眺めていた。 「来ないねー?」 夕実に俺のスマホを見せた。 画面には今し方ホテルにチェックインした唐沢直哉と比嘉結菜の写真。 「……そういうの、こんなところで見せますか普通。」 「見てんじゃん。」 夕実の手元にある写真を指差した。 「そもそも澤木さん、なんで私がここにいること知ってるんですか。」 「依頼者のことつけてくるくらい、簡単。」 夕実は終業後一度、総合病院へ。その後このマレーシア料理店へとやってきたのだ。 夕実のことも調べていた。 29歳、貯蓄2300万。 大学…当時20歳の頃、風俗嬢斡旋会社を起業して稼いで稼いでボロ儲け。風営法違反の取り締まりに引っ掛かる寸前、会社を閉じた。 もっとも、そういった商売は反社会的勢力に目をつけられやすく、夕実はそういったところにも鼻を効かせやめ時を決めていたのだ。 比嘉結菜も斡旋された性風俗嬢の1人だった。 比嘉結菜から売上を散々ぱら巻き上げた。 比嘉結菜には当時、数百万円、親の借金がありそれを返すために夕実の斡旋会社に登録したのだ。 当時、比嘉結菜は15歳。未成年者。 夕実は職業安定法違反を犯しながらも自分の罪は認めなかった。 比嘉結菜が年齢を詐称したのだと、その罪を全て比嘉結菜に押し付けたのだ。 比嘉結菜は当時、望まぬ妊娠をし、中絶手術も受けている。 比嘉結菜は、杉田夕実に恨みがある。 ただ、当時とは顔も名前も変わっている。比嘉結菜は、偽名であって本当の名前は数原幸乃(かずはらゆきの)。風俗嬢としては、ユキと名乗っていた。 杉田夕実が当時の比嘉結菜の名前を覚えている保証もない。
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