別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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唐沢直哉を見てみれば、何を考えているのか表情を冷たくしていた。 杉田夕実のことを心配する気持ちは全く持ち合わせていないと、その顔が言っている。 「無意識に相手を嫌な気持ちにするのが夕実です。自分勝手過ぎて殴られたんじゃないですか。」 お前もお前で自分勝手だろ。 唐沢直哉の態度に、自分がやってることの意味を見出せなくなってくる。 唐沢直哉には杉田夕実を助けたいという気持ちは微塵もない。 もう、別にコイツらほっといていいんじゃないかな……と思えて来てしまう。 テーブルに置いたスマホが震えている。 「ちょっと、ごめん。」 スマホを手に取り 「はい。」 応答すれば、 「……。」 一方的なひと言で電話は切れた。 「澤木さん?」 唐沢直哉が不安そうに俺の顔を覗き込む。 電話の声は漏れていなかったようで、唐沢直哉には何が起きているか全くわからない。 岩屋弁護士には、なんとなく話していたが。 「直くん。ちょっと行こうか。」 「え。」 スマホにLINEが入って来て確認してソファーから立ち上がった。 「澤木さん……。」 不審な顔で見られているが、唐沢直哉を連れて行かないことには話にならないので。 「まさか、俺のこと何か嵌めようとしてます?」 コイツはどこまで自分がかわいいんだよ。 「……いや嵌めるならもっと巧妙にやるわ。」 岩屋弁護士は何も言わずに俺と唐沢直哉のやりとりを見ている。 岩屋弁護士には予め話してあることだ。
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