別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「俺と結婚したがってたのは夕実です。 乃村常務と愛人で居続けながら、俺と結婚しようとしてた。夕実は、自分と乃村常務の間にできた子どもを俺に養わせようとしていた。」 まあ、それについては同情の余地ありか。 「そんな女の人生に責任なんか取りたくないんです。」 「なるほど。では、すぐに離婚すべきです。杉田夕実さんが騒ぎ立てるのが怖いと言うなら、あなたの代理で私が話し合います。」 確かに岩屋弁護士が代理で話し合った方が話はまとまるだろうな。離婚届も書いてもらいやすいだろう。 「また、杉田夕実さんの失踪に関し、既に警察が動いています。アンゼンローンに対し民事訴訟をするより警察に任せた方が良いと考えます。 あなたの考えで危ない橋を渡るほど、私も澤木さんも暇ではありません。」 「じゃあ、借金は…?俺、取り立てに会うんじゃ……。」 「あなたを言葉巧みに騙した比嘉結菜は、アンゼンローン…反社会的勢力深池組と関係が深い。その比嘉結菜に騙され、闇金に手を出した。と、警察に訴えてください。それができればあなたはこれ以上、闇金に追われることはありません。」 「……。」 岩屋弁護士の言葉に何も言えず、唐沢直哉は俯くばかりだった。 俺たちの乗っている車の横に黒のハイエースが停車する。 「澤木さん?」 「直くん。本人がどういうつもりだったかちゃんと聞きな。本人は、直くんを利用したってちゃんと伝えたつもりでいるみたいよ。」 唐沢直哉が比嘉結菜に好意を持っているのは間違いがないこと。逆手に取られて騙されたことを自覚する必要がある。 ただ、比嘉結菜と話をしてみてわかったこともある。それが本心なのが、俺には少し心苦しいが。
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