別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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比嘉結菜が楽しそうに唐沢直哉の写真を見せてきた。見れば、比嘉結菜の自撮りの奥に結構な高さまで壁を登り詰めている唐沢直哉が映っている。 「あ、こっちは動画です。」 唐沢直哉がボルダリングに興じている動画だ。比嘉結菜が、キャッキャして応援している声も入っている。 「ほんと…デートじゃん。」 「直くんといると楽しくて。本当は夕実さんへの復讐のために寝とってやったんですけど……だんだん、割り切れなくなってしまって。」 比嘉結菜は他人のモノに手を出して、割り切ってセックスだけして楽しむタイプ……。 他人のモノである男であれば単に性処理の相手として楽しんで飽きたら捨てるのも楽だという考えがあるらしい。 「……普通に遊んでるもんね。」 「こんなこと、するもんじゃないですね。今まで、男性に対して……欲しいって本気で思ったことなかったんですけど……。なんか……。直くんは違うというか。」 比嘉結菜が、スマホに映っている唐沢直哉の顔を見つめて切なそうな顔をしている。 その顔を見ると、比嘉結菜は唐沢直哉に恋をしているということが丸わかりで。 「ゆいちゃんさー。俺に話しすぎよ?大丈夫?」 「探偵さんには守秘義務があるんでしょう?」 意味ありげな顔で上目遣いしてくる。 バカな男はこれに引っかかるんだろうな。 「で、本気で好きな直くんとはこれからどうなりたいの?」 「……んー。」 スマホを伏せて宙を見るその目には涙が溜まり始める。
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