別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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そして今。 ハイエースの後部座席。俺と岩屋弁護士そして警察官の野尻に見張られ、唐沢直哉と比嘉結菜が対面している。 「ごめんね、これ。」 比嘉結菜が唐沢直哉に差し出したのは、唐沢直哉のスマホ。 「……そっか。ゆいちゃんがんだ。」 ん? …持っててくれたんじゃないよ?お前から盗んだんだよ。わかってる? 唐沢直哉はスマホを受け取って電源を入れた。 「充電も…ありがとう。」 は?ありがとうじゃねえだろ。 いかん。個人的感情が湧き上がってくる。俯瞰しなければ。 「直くん。私が言ったこと覚えてる?」 「え。」 「私が直くんに近付いた理由。皆さんそれを聞きたくてここにいるの。探偵さん、弁護士さん、警察官さん……。」 「あ、うん。夕実に復讐したいから……。」 「覚えてたね。いいこ。」 比嘉結菜が唐沢直哉の頭を撫でる。 「弁護士さんはね。直くんを私に騙された被害者にしたいのよ。」 「え。でも、ゆいちゃんは……。」 唐沢直哉に余計なことを喋らせないように比嘉結菜は、人前にも関わらずその口を唇を重ねて塞いだ。 唇の交わりを解いた比嘉結菜がゆっくり話し出す。 「直くん、私は直くんを騙した悪人なの。 私は、夕実さんに復讐をするために直くんを私に夢中にさせた。 直くんがギャンブル狂だとわかって、利用して借金を作らせた。 ね?悪人よね。」 唐沢直哉は黙って比嘉結菜の話を聞いている。
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