別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「絶対に逃げられないように自動的に利子が膨らむ闇金に借金をさせて、夕実さんに飛び火が行くように、直くんと夕実さんを結婚させた。」 言葉の切れ目を見つけて、話そうとする唐沢直哉だが、比嘉結菜は喋り続ける。 「闇金の借金は完済できない。直くんが返せなければ、家族になった夕実さんが代わりに返すことになる。アンゼンローンは深池組と繋がりがあるから、どうやったって逃げられない。」 比嘉結菜は淡々と用意していた言葉を並べていく。 「私は夕実さんを地獄に落とす完璧な計画を立てたの。昔からずっと考えていたことよ。」 比嘉結菜が薄く笑う。 「私は、深池組に助けられて、深池組と一緒に生きているの。今もずっと。」 唐沢直哉は、比嘉結菜の手を取って縋るようにその顔を見た。 「夕実さんは、色恋に執着心があるの。 夕実さんを愛人にしている乃村さんは、パパのお友だちで。 夕実さんは、偶然乃村さんの愛人になったわけじゃないのよ。 夕実さんは与えられるのが大好きな人。偽物でも愛と受け取れる抱かれ方をすれば手放したくなくなってしまうの。 夕実さんは依存しやすい性格なのよね。だからこそ、直くんは利用しやすかったの。本当にごめんなさい。」 真っ直ぐに唐沢直哉の目を見る比嘉結菜が本心を曲げながら喋っているようには、全く見えない。 唐沢直哉は、納得のいかない顔でじっと比嘉結菜の話を聞いているより他がないようだった。 「弁護士さん。私が直くんを騙しました。全部、録音してくれましたよね。」 比嘉結菜が、岩屋弁護士に視線を送った。 「…はい。全て。ボイスレコーダーに。」 岩屋弁護士は録音のスイッチを切って、再生を押す。比嘉結菜のは、証言として十分に残されている。 「唐沢直哉さんの借金を取り消すため、アンゼンローンとの交渉に使わせていただきます。」 岩屋弁護士が俺と目を合わせ、さらに野尻と目を合わせる。 「さて、比嘉結菜さん。あなたが刑事罰を受けるか否か……もうひとつお話を伺いたいのですが。」 「……はい。」 比嘉結菜が、何か覚悟を決めたような顔を見せた。
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