別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「…直哉ぁ。愛してるぅ。夕実は直哉が大好きぃ。うふふふ。」 ニタニタ笑う杉田夕実に、唐沢直哉は何の感情も湧き起こらない。 前歯の無い口元にも同情心も湧き起こらない。もはや無関心。 気狂いのような夕実の表情に、自分とは関係のない生き物が何か喋っているとしか思えなくなったのだ。 杉田夕実は、唐沢直哉の借金が原因で暴行を受けた。それにも関わらず、杉田夕実に無関心の唐沢直哉はただ一刻も早く関係を断ちたいと思う。 「そう。でも、俺は違う。」 「え…。だって、直哉。言ってくれたよね。夕実に愛してるって。言ってくれてたよね。夕実は直哉が大好きよ。夕実は直哉を愛してるの。 夕実を連れて帰って。夕実を抱いて。直哉、直哉。夕実を愛して。大好きなの、直哉ぁ。 ねぇ、直哉ぁ。夕実のこと愛してるよね?ねえ。だいすきでしょう?」 幼児が甘えているような口振りの杉田夕実に、唐沢直哉は嫌気が差したのか。 「悪いけど。俺は今、夕実が嫌いだ。そういうの心底気持ち悪い。」 杉田夕実が精神的に病んでいるのは誰のせいか考えもせず、唐沢直哉は拒否の姿勢を見せた。 「夕実、昔。未成年に売春させてたんだよね。 俺そういうことする人、吐くほど嫌いなんだよ。それに乃村常務の子どもを俺に養わせようとしたよね?何考えてたの?マジ気持ち悪いわ。」 唐沢直哉の言葉に杉田夕実の顔面が怒りに歪んでいく。 「……信じられない。」 「え?」 「信じられない!!」
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