別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「直哉、欲しい。直哉の…欲しい。奥までちょうだい。夕実の奥に入れて。」 夕実は性的興奮の中、直哉を求めているが。直哉は夕実に応じることはない。 唐沢直哉は、看護師に夕実のマイナンバーカードを見せ必要事項を書かせていた。夕実のマイナンバーカードは夕実の自宅から持ち出したのだ。 「ありがとうございます。怪我、深くないといいですね。」 「……慣れてます。他の患者さんも似たようなものです。」 離婚届に判を捺し、唐沢直哉は杉田夕実にそれを見せた。 「夕実、市役所に出すよ。さようなら。」 夕実は必要事項が埋まった離婚届を見て直哉に飛びかかろうとするが、看護師が夕実の体を押さえつける。 「やだ、ほしい。直哉の欲しい。精液ちょうだい。セックスしてよ。夕実を抱いてよ。 あのアバズレのところに行かないで。夕実を幸せにしてください。直哉、抱いて。 夕実を愛してセックスして。イかせて、いっぱい白いのちょうだいよ。」 夕実の発言は、直哉を呆れさせるに十分だった。夕実こそ、直哉を性処理の道具としか考えていない。 夕実はこの別れの瀬戸際に抱いて欲しいと、自分の性欲を満たして欲しいと直哉に懇願しているのだ。 思えば始めからそうだった。 3年前、会社の飲み会で酔い潰れた直哉。夕実は、直哉を介抱すると理由をつけて一緒にタクシーに乗りこんだ。 夕実にも直哉にもはっきりとした下心があった。夕実は乃村常務の愛人を続けながら、自分に都合よく直哉を扱いたかった。 直哉はセックスできればなんでもよくて、その当時、自分のそばで女の快楽を欲しがっていた夕実はなんとなく付き合って、適当に捨てれば良い相手に思えた。 どちらにも、お互いを思い尊重し付き合う気持ちなど更々なかったということ。 軽く付き合って、飽きたら終わり。なんならセフレレベルでも構わないそんな気持ちしかなかったはずが。 夕実には直哉に対する執着心が生まれてしまった。
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