別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「夕実。よく考えて。俺、そんな優良物件じゃないでしょ。」 直哉は、離婚届をバッグにしまう。夕実に破かれないためだ。 ただ、直哉には夕実を受け入れる気も拒絶する気も無くなっていた。赤の他人だと思えば、聞き苦しい発言も見苦しい行動もただのノイズでしかない。 「夕実は今、俺に執着して周りが見えないだけ。俺は、ギャンブルで借金作って。それを夕実に押し付けた、最低なクズ。そうでしょ?」 「直哉はやっぱり、アタシがいなきゃ生きられないのよね。アタシがお世話してあげるから。」 夕実は、クズな直哉が自分に縋り付いて来てくれたと、そう思いたかった。 「アタシ直哉を助けてあげる。お金あるのよ。それにね、汚くて気持ち悪いけどお金持ってるから。アイツから騙し取ってあげる。いくら欲しい?いくらでも奪ってくる。」 「そんなことしなくていい。そうやって、頭イカれて、体腐らせてもらっても。俺、そんなウジがわきそうな金受け取りたくないし。」 「直哉のためなら夕実なんでも平気なの。汚い男に尿道舐められておしっこ飲まれても我慢できるのよ。」 「そう。でも俺が平気じゃない。どんなに夕実が俺を求めようとも、俺はもう関わりたくない。」 直哉は、バッグから夕実に無理やり押し付けられた指輪を出し、夕実に直接渡すことなくテーブルに置いた。 「返すね。ここに置く。夕実。今までごめん。さようなら。」
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