別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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杉田夕実が姿を消し困惑したのは、入院先の病院ぐらいのものだった。 治療費も入院費も支払いのないまま3週間が過ぎようとしていた。 比嘉結菜も唐沢直哉も、別段これと言って気にも留めなかった。 この2人は杉田夕実とは関係を絶っているため、杉田夕実に関することは情報を取りに行かない限り知る由がなかったのだ。 唐沢直哉の借金は、岩屋弁護士の働きと比嘉結菜の口利きで白紙に戻すことができた。 唐沢直哉は一斎何もしていないが、借金地獄からは解放されていた。 唐沢直哉はギャンブル依存症の治療は続いているが、転職し仕事は再開している。転職した会社はほとんどがリモートワークで働く場所も時間も自由だった。 比嘉結菜の杉田夕実に対する暴行の教唆については、先に逮捕された深池祐樹および新沼敏博の証言と比嘉結菜の証言に差異があり、罪とするには困難だった。 事情聴取を繰り返すうち、杉田夕実への暴行・売春の強要については、深池祐樹および新沼敏博の個人的感情が及ぼした犯行と警察側が判断した。 従って、比嘉結菜は不起訴。深池祐樹は暴行罪で懲役2年または罰金26万円。新沼敏博は、暴行及び売春防止法違反で懲役3年または罰金31万円。深池祐樹と新沼敏博は罰金と保釈金を支払い釈放となった。 比嘉結菜が不起訴となるまでの間に商業ビルの一角にあった比嘉結菜のランジェリーショップの実店舗が畳まれネットショップだけの営業となっていた。 杉田夕実の一件…刃物振り回し騒動以来、客足が途絶え店舗売り上げがほぼ0となった中、深池組が抱える性風俗店への販売や一般ユーザーからのネットでの購入は途絶えることなくそちらでの売り上げは上々だったのだ。 比嘉結菜と数原梅乃は、ネットショップからも在庫管理からも外された。自分たちの店だったランジェリーショップは、深池組に権利を奪われたカタチだ。 だが、これは篠木由治がかけた情けだった。 比嘉結菜と数原梅乃が篠木由治の下、ランジェリーショップで働いていたのは、親の借金のカタとなり深池組に身を置き借金を返済するためだった。 篠木由治が数原夫妻の借金の元金は完済され不当な利子の返済額は過払金であるため借主に払い戻すと言い出したのだ。 両親の代わりに少しずつ借金を返して来た比嘉結菜に利子分の金が全て払い戻され、さらには比嘉結菜と数原梅乃は深池組に縁を切られた。 篠木由治が情けをかけた比嘉結菜が、下っ端の若い衆のために警察に捕まろうと全ての罪を被ろうとしたことは、篠木由治自身が望みもしなかったこと。 比嘉結菜(数原幸乃)と数原梅乃は、一般人だと篠木由治の中で線を引いていたのだ。 比嘉結菜が情けをかけるべき相手と事柄を間違えてはいけないと縁を切らせる選択をした。 篠木由治が比嘉結菜に渡した金額は、成人女性2人がそれなりのマンションに住み就職先を見つけて生活が落ち着くまでやり過ごすには十分なものだった。
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