別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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マレーシア料理店に唐沢直哉がやってきたのはそれから10分後。 杉田夕実は、待ちに待った甲斐があったと、直哉見つめた。 「ごめん。ちょっと用事が長引いた。」 先程まで比嘉結菜と体を重ねていたことは杉田夕実にはわかっている。 「大丈夫。…直哉。私から大事な話してもいい?」 「うん。いいよ。俺、その後話す。」 夕実は、自分のお腹に手を置いた。 「……3ヶ月。」 「…え。」 眉間に皺を寄せた直哉。 直哉は、自分相手に妊娠などあり得ないと思ったのだ。ポーズではあるが避妊具も使用しているし。 「そっか。………。」 比嘉結菜から夕実と結婚しろと言われていなければ、唐沢直哉も頭を働かせるところではあった。 自分の子ではない。そう確信している直哉ではあるが、自分の背負っている借金と、比嘉結菜からかけられた呪いの言葉が、唐沢直哉の思考を止めているのだ。 「私、……きょう30歳になったんだ。」 首元のプラチナの細いネックレスを触る夕実。 3年前のきょう、唐沢直哉から杉田夕実にプレゼントしたものだ。 「最近、来るものが来なくて、さっき病院に行ってみたの……間違いなかった。 今年直哉は私に一生物の宝物をくれたんだね。」 ふっと微笑む杉田夕実のその表情に唐沢直哉は、背筋が凍るのを感じた。 いくら比嘉結菜に言われても、やはり夕実との結婚生活を想像すると窮屈なものしか頭に浮かばないのだ。 こんな三十路のババァに俺の一生決められてたまるか………。 直哉の本心が頭に響いた。 「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる。」
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