別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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唐沢直哉が席に戻るなり、夕実は、バッグから婚姻届を取り出した。 「私たち、この子のパパとママになりましょう。」 夕実の記入すべき箇所は記入されている。 「帰りに、比嘉結菜さんのお宅に行って、私たちの証人になってもらいましょう。」 直哉は、ひゅっと息を吸い込んだ。 「比嘉結菜さんには随分とお世話になっているもの。特に直哉は、何から何まで。」 杉田夕実は、唐沢直哉に数枚の写真を見せた。 「きょうも、お世話になったんでしょう?」 直哉は背中に汗が滲むのを感じる。 「もう1人の証人は、直哉のお母さんにしようか。女で一つで育てた直哉が、立派なパパになるの。心から喜んでくれるだろうね。」 立派なパパになる男は借金まみれだと夕実は知っている。 「お母さんには、今、会えない。」 「あら、どうして?」 直哉が煽るように水を飲んだ。
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