別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

20/142
前へ
/143ページ
次へ
「……。とにかく、会えない。」 震える体をなんとか鎮めながら料理を口に運んだ。 「残念ね。」 夕実は、再び自分の腹を撫でた。 「ところで、直哉の大事な話は?」 「……あ、うん。」 直哉の大事な話。 「俺も、結婚……考え……てた。」 直哉が、ジャケットのポケットから出したのは、母親が実家にいない時に実家に忍び込み持ち出した母親の婚約指輪である。 直哉の父親は、母親と結婚してすぐ他所に女がいることが発覚。直哉が生まれてすぐに2人は離婚している。 だが、母親は数十万程度価値のある婚約指輪だけは捨てずに大事に持っていたのだ。 小さなダイヤモンドが光り輝くプラチナリングの婚約指輪。老後、自分が生活に困ったら質屋に入れようと考えていたようだ。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加