別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「夕実。証人、もう1人は乃村常務がいいんじゃない?夕実がいつもお世話になっているし。」 直哉は自分でも驚くほどに自然に夕実に語りかけていた。 夕実の顔に全く焦りの色はない。直哉にしてみれば、俺だってわかっていると仕返しをしたつもりだったが。 「そうね。私たちの結婚なら喜んでくれるでしょうね。」 夕実が直哉の手を取る。左手の薬指を持ち上げてシルバーの指輪をはめた。 「比嘉結菜さんの前でも絶対に外さないでね。会うことがやめられないなら仕方が無いわ。自由にして。 だけどあなたは、のパパで私の夫なのよ。忘れないでね。」 直哉は、はめられた指輪を見て再び怯みそうになる。気持ち悪い…重い…。頭の中でそんな言葉が浮かんでくる。 ーーー俺が乃村常務のこどものパパ……。 嘘で作った笑顔が引き攣ると胃がギュッとなるのを感じる。 夕実は直哉の表情をみながら、ふふッと笑った。 「直哉。比嘉結菜さんのこと、もう病気のようなものよね。それで、直哉が満たされるならもう仕方が無いわ。 確かに比嘉結菜さんは魅力的だと思うわ。女性的にふくよかで私とは正反対よね。 私の体は子どものものになってしまったから、そうね、直哉の性処理のためなら会っても構わないわ。そこに心はないものね?」 ーーー逆だ。 瞬間的に直哉は思った。 「そうだね。心は。うん。」 比嘉結菜に何度癒しを求めたかわからない直哉の頭は混乱した。 「ねえ、直哉。私に見せて。」 「え?」 婚姻届をまじまじと見つめる夕実は、口の端を上げた。 「あなたたちのセックス。」
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