別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「別れたい」 杉田夕実(すぎたゆみ)の口癖だ。 彼氏の直哉と別れたいらしい。 「はあー……。」 コーヒーを飲みながら、ため息。 彼氏の直哉は明らかに浮気をしていて、それは3度目で相手は同じ女である。 夕実は2度、その浮気相手と対峙していて。 1度目、縁を切らせた時。 比嘉結菜(ひがゆいな)というその女はギャン泣きして、『2度と唐沢直哉(からさわなおや)さんに近づきません。きょう限りお別れします。』と、夕実の前で土下座をしたのだ。 直哉も同様、夕実の前で泣きながら『夕実とは別れたくない。愛してるのは夕実だけだ。』と言い、土下座をしたのだ。 2度目、探偵…(つまり俺)を雇って浮気を突き止めた時。夕実は唖然とした。 浮気相手がまさかの比嘉結菜。 夕実は比嘉結菜に誓約書を書かせた。 『金輪際、唐沢直哉さんに近づきません』と、比嘉結菜は震えて泣きながら夕実に頭を下げた。 直哉についても同様で『でも、愛しているのは夕実だけだ』 そう言って『信じてくれないなら死ぬ』と自分の喉元に包丁を突き立て泣きながら懇願してきた。 目の前で死なれたくなかった夕実は許すというより諦めるしかなかった。 3度目。それはとても簡単だった。 2度目の騒動から2ヶ月ほどで、直哉は自宅に比嘉結菜を連れ込んでいて。 たまたまその瞬間、直哉の自宅を訪れた夕実はあろうことか直哉と比嘉結菜がまぐわい2人同時に絶頂に達する声を聞いてしまったのだ。 「はあー…気持ち悪い。別れたい。」 「じゃあ。今回は。」 夕実が飲んでいるコーヒーは俺が淹れたもの。 「別れたいからここに来たってことでいいね。」 「いい。別れたいの。もう、直哉といたくない。」 浮気調査の相場は10万円から15万円。 こんな金を使って手に入った未来に納得のできない依頼人は多い。 世の中、男も女も碌なもんじゃない。
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