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「アテは……婚約者の、貯…金で…返、済を…。」
「なるほど。いい婚約者ですね。」
篠木由治が何を考えているのか、唐沢直哉には皆目見当がつかなかった。
「明日にでも全額返すか。それとも、明日から私の会社に転職するか選んでください。」
「えっ?」
篠木由治が土下座の形になっていた直哉の体を正座の形に戻して肩を抱いて耳元で囁いた。
「結菜から聞いています。恋人と同じ職場は息が詰まりますよね?
少し息抜きに明日からフィリピンに行きませんか?荷物を預かって帰ってきて欲しいんですがね。
あなたの働き次第でアンゼンローンには借金がチャラになるように深池組から働きかけます。」
唐沢直哉の後頭部を篠木由治が優しく撫で回す。
直哉はそれが不気味で仕方なかった。
何かの品定め?臓器売られる?それとも、……まさかこの男、そういう趣味があるのではと疑いが湧いてくるのだ。
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