別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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比嘉結菜と唇を重ねながら、自分のシャツのボタンを外す直哉。 杉田夕実には反応が鈍いがやはり比嘉結菜には雄が疼き出す。 「直くん、夕実さんとは結婚するの?」 「……するよ。してやるよ。」 「そっかあ。偉い偉い。」 婚姻届は、唐沢直哉が預かっている。この場で燃やして灰にしてしまってもいいが。 「夕実がゆいちゃんに婚姻の証人になってほしいって……。」 「…すごい。さすが夕実さん。」 「婚姻届書かされた。俺が持っててってさ。」 「今持ってるの?」 「あるよ。」 唐沢直哉は多少興奮気味だ。婚姻届を書いたその時の夕実の顔が浮かんできて腹が立って仕方がない。 ボタンを外した唐沢直哉のシャツを比嘉結菜が優しく脱がせ、Tシャツ1枚のその上半身を優しく抱きしめた。 「1年我慢するのよ……。いつでも来ていいからね。」 「いつでも?」 比嘉結菜は直哉のTシャツに手を入れ背中を撫で回す。 「籍を入れたからってずっと毎日そばにいなきゃいけないなんて誰が決めたの?」 直哉の疲弊した顔を比嘉結菜は優しい笑みを浮かべながら覗き込んだ。 「言ったでしょ?私は、夕実さんが地獄に落ちるところが見たいだけ。貯金も直哉も失って廃人になってほしいのよ。」 比嘉結菜は直哉の頬に口付けて、直哉と目を合わせ甘えるようにその目を細めた。 「籍を入れるってことは債務も財産になると思われがちだけど、夫個人の債務は夫だけのもので妻に返済の義務はないの。まあそれが生活費のためであれば妻にも返済義務があるけどね。 ネットでも簡単に調べられるけど、わざわざ調べないでしょ?夕実さんだって例外じゃないわ。 きっと夕実さんは脅されるまま、直哉の借金を返済することになる。それで、返済のために体を売り出したら完全に私の勝ち。 私が夕実さんにされたことと同じ屈辱を味わえばいい。」 比嘉結菜の言葉を理解するにつれ、杉田夕実と入籍することに対し恐怖心が薄れていく。
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