別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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唐沢直哉にも、杉田夕実を地獄に落としたい気持ちがある。 ーーー乃村との間にできた子を俺の子だと言い張る夕実には吐き気がする。 しかし、本当にそんなにうまくいくのだろうかと疑いの念も持ってしまうのだ。 「夕実さんと結婚すれば直くんは自分で借金を返す必要なんてなくなるのよ。夕実さんを連帯保証人にして全部押し付けてしまえばいい。」 比嘉結菜が、直哉の胸筋を指でなぞり、爪の先で乳首の先端を引っ掻きながら、ふふっと笑って直哉の反応を見る。 「直くんにとってはパパの会社に転職して借金をチャラにしてもらうのも悪い話じゃないけどね。 でも、それはそれで直くんは少し苦労するかもしれない。」 少し意地悪に乳首をつねれば直哉は「うっ」と声を漏らした。痛みに耐えたのか、快感と捉えたのかは、直哉自身もわからないが。 「それに私はそれじゃ納得できない。だって、それじゃあ、夕実さんを地獄に突き落とせないもの。だけどパパの言うことも聞かなくちゃいけないの。 直くん、早く夕実さんと結婚して。 私、夕実さんの思い通りに婚姻の証人になるし、もう1人の証人は明日の朝パパにお願いしよう? 私の人生ボロボロにされた分、夕実さんにもボロボロになってもらいたいの。お願い。 私の希望は直くんだけなんだよ。」 比嘉結菜の目に涙が溜まって、上目遣いで見つめられるうちに、直哉は比嘉結菜に加担することが正義であるように思えてくる。 9年前の杉田夕実は当時15歳だった比嘉結菜を言葉巧みに騙し、性風俗店に斡旋。比嘉結菜…本名数原幸乃(かずはらゆきの)への客からのチップを巻き上げていた。 家族の借金返済のためにもっと稼ぎたければ本番をして客に大金を要求すればいいと夕実に吹き込まれ、夕実の監視のもと幾人と体を繋げたかわからない。 不潔な人間もいたし、アブノーマルな性壁の男もいた。人間同士というより、動物以下に身勝手な振る舞いをする男もいた。 コンドームを使わない男も何人もいたし、男たちは躊躇うことなく幸乃の膣内で精液を放出した。 妊娠中絶、性病……未成年の幸乃は身を滅ぼし、死の淵を彷徨いまさにボロ雑巾だった。 『ユキちゃん、もっと上手に働いてくれないと困るなー。他の子は、自分のカラダ自分で守ってるんだけどー。』 杉田夕実はクスクス笑いながら数原幸乃から売上金のほとんどを巻き上げ、世間知らずな未成年の幸乃を地獄に突き落とした。
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