別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

42/142
前へ
/143ページ
次へ
27歳、俺と同い年。もう少ししっかりしろよ、唐沢直哉。声かけて損した。元警察官の俺の正義感が仇になった。 「助けてやる。でも、俺の3つの提案を呑め。」 「……提案?」 首を傾げる直哉と目を合わせた。 「1個目の提案な。自己破産しろ。弁護士は紹介する。」 「自己破産?弁護士?」 コイツ、やっぱアホだ。全然ピンときてない。 「2個目の提案な。お前が悪くないと思っても杉田夕実に謝れ。」 「夕実に俺が?嫌な思いさせられて?」 嫌な思いはお互い様だ。 「いいから謝れ。3個目の提案。杉田夕実をきちんと振ってやれ。お前の責任だ。」 「俺の責任?なんで?」 うわー、バカすぎて腹立つー!ぶん殴りてえ! 「男として、するべきことをしないで逃げてきた結果だ。入れた籍にもきちんと責任を持て。杉田夕実の戸籍に傷つけてタダで済むと思ってんのか?」 「……4つになってる。提案。」 黙れ、アホ。 コイツが救いようのないアホだということはここ何ヶ月かの行動ですでにわかっている。 「……てか、他人のくせに」 「あ?助けて欲しいんだろ?言うこと聞けよ。とにかく移動する。そのスーツケースは捨てろ。空っぽだろ。そのまま捨てていけ。スマホと腕時計もだ。」 スーツケースには何も入っていない。フィリピンから荷物を運ぶために持たされたものだ。 スーツケースと腕時計、それにスマホを捨てさせた理由はGPSの発信機がついているから。 運び屋が1人飛ぶことになる。深池組がこれから唐沢直哉を探すことになるだろう。 だが、こちらはこちらで警察を味方につけることは容易にできる。 ……それが、2日前の出来事だ。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加