別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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名刺を見るなり夕実は何かを思い出したように、ふっと笑った。 「そう、……アンゼンローンさん。」 20歳のころ、夕実が性風俗嬢斡旋会社として事務所を構えていたビルには何軒か消費者金融が入っていて、アンゼンローンもその中に店舗を構えていたのだ。 探偵(つまり俺)からも、唐沢直哉がアンゼンローンで多額の借金を作っていたこと、アンゼンローンが反社会的勢力 深池組の息のかかった闇金であることは聞いているが。 「ねえ、あなた。私と直哉が、新婚だなんて。何を言ってるのよ。」 杉田夕実は知らないふりをしたのだ。 直哉の行動は読めるし、おそらく唐沢直哉が勝手に窓口に出した婚姻届が受理されたのだろうということは目の前の男の口振りで理解できる。 深池祐樹は、杉田夕実から直哉の借金の取り立てさえできればなんだって良いと思っている。 杉田夕実を陥れるのが目的だと聞いている。 深池祐樹は篠木由治から預かった戸籍謄本の写しを杉田夕実に見せた。夕実はそれを覗き込むなり深池祐樹から奪い取るようにして取り上げた。 「…どういうこと……。」
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