別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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それから2日後。 杉田夕実は会社帰りに比嘉結菜のランジェリーショップに脚を運んだ。 その店舗は、商業ビルの3階にあった。女子高生向けのプチプラなものから、大人向けの高級嗜好なもの、それに男性が脱がせたくなるようなナイトウェアがカジュアルな雰囲気で並んでいる。 目についたのは10代でも恥ずかしくなく手に取れそうなフェムテックアイテム。 その近くにはセルフプレジャートイも陳列されている。ラブグッズはあからさまなものはなく女性でも手に取りやすい形状のファッション性のあるアイテムが、揃えられていた。 女性の性を明るく受け止めている雰囲気がいかにも比嘉結菜らしいと杉田夕実は、すんとした顔で商品を流し見した。 店舗にいるスタッフは、比嘉結菜ではない。 “数原”と書かれた名札をつけた店員。 オーバーサイズのビンテージもののデニムに、ニューバランスのスニーカー。トップスは古着だろうか茶色のジャージで中にはロックTシャツ。髪は金髪のくせ毛でツーブロックにしている。 唇は艶があり目元は黒いプラスチックのフレームの眼鏡をかけていて、耳にはピアスが左右3つずつついている。 背は高くない。おそらく女性だろう。女性下着の店なのだから。 杉田夕実は、数原をちらちらと見ながらテナント内をどれを購入するともなく歩いている。 と、数点だけ男性用の下着が並んでいる。海外ブランドの肌馴染みの良さそうなボクサータイプの下着だ。 量販店のように如何にもパンツですというように什器にフックで引っかかっているような陳列のされ方ではなく、ファッションアイテムのひとつとして、見劣りしないように手に取りたくなるように並べられていた。 手に取って、ゴムを見てハッとする。 gicipiは、直哉が好んで着用しているブランドで、確かにこのタイプの下着も着用しているのだ。まさか、この店で購入したものなのかと、眉間に皺を寄せながら商品を棚に戻した。 「何かお探しですか?」 杉田夕実に声をかけて来たのは比嘉結菜だった。 比嘉結菜は、夕実がここへ何をしに来たかなど知りはしないが店先でヒステリックを起こされたらたまらないと思いながら作りたくもないつくり笑顔で杉田夕実を接客した。 比嘉結菜は杉田夕実に金切り声で声をかけられた方が店やお客に迷惑になると思ったのだ。
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