別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「直哉を返してよ。」 比嘉結菜と杉田夕実は、商業ビルから少し離れたカフェに来ていた。 「どこに隠したの?」 杉田夕実は唐沢直哉は比嘉結菜の元にいると考えていたのだ。 「ずっと、電話も通じないのよ。あなた、直哉のスマホ取り上げたんじゃないの?電源、切ったままにしてるんでしょ?」 全て、夕実の憶測だ。 比嘉結菜も唐沢直哉がどこに行ってしまったのか知らないのだ。 「私、夕実さんに約束しましたよ。誓約書も書きました。あれから、会っていません。」 比嘉結菜は、堂々と嘘をついた。 直哉が失踪してしまったのだから、嘘をついても構わないだろうと思った。 それよりも、追い込んで繋ぎ止めていた男に逃げられた杉田夕実が滑稽で堪らなかった。 「あなた、嘘つきよね。」 杉田夕実は、探偵(つまり、俺)から送信された写真を比嘉結菜に見せた。 「直哉は、あなたに会った次の日から連絡がつかないのよ。直哉にずっと会ってるわよね。なんなの?直哉は、私に別れたら死ぬって言ったのよ。」 比嘉結菜は表情ひとつ変えずにスマホを見つめている。誰に頼んだのか、自分と直哉が車内で口付けを交わしている写真だ。 「仕方ないと思いません?」 「何がよ。人のものに手を出すなんて泥棒よ?」 杉田夕実がテーブルを強く叩いた。 「夕実さん。勘違いですよ。」 「はあ?」 「私は、会いに行っていません。直くんが、会いにくるんです。」 比嘉結菜が視線を夕実に移せば、アイスティを自分を目掛けてぶちまけてくるのが見えた。
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