別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

58/142
前へ
/143ページ
次へ
“どこにいるんだ?鬱病で入院でもしているのか…”と、会社で噂になっている唐沢直哉だが。 「…ゲボです。クソです。死ねばいいのに。」 「そこまで言う?」 唐沢直哉は俺の事務所で俺が杉田夕実を張っていて激写してきた画像を見て、今にも吐きそうな顔を見せてきた。 それは、常務室で杉田夕実が乃村と情事に及んでいるところを隠しカメラで捉えたもので。 杉田夕実が乃村に抱かれて喘いでいる顔がはっきり写っている。 失礼ではあるが俺も画像を見た瞬間吐くかと思った。 「ま、お前も比嘉結菜と同じことしてるけどな。」 「ゆいちゃんは、かわいいし。俺もこんなジジイじゃないし。」 「ルッキズムー。自分らは美しいとでも思ってんの?俺から見たら君のしてることもキモいけど。」 ノートパソコンのフォルダに入っている比嘉結菜と唐沢直哉のキス写真を当人に見せた。 「な?キモいよな。な?お前の顔、キモいよな。な?な?」 写真を見ている、唐沢直哉の顔はすんとしている。 それから俺の顔を軽蔑の眼差しで睨みつけてきた。 「澤木さんて暇なんですか?こんな趣味の悪い写真撮って。」 はあ? 「いや、あのー。こういう仕事なのよ。俺の仕事。」 直哉は画面に映る比嘉結菜の顔をじっと見た。 「荒み(すさみ)そうですね。…こころ。」 ヤバい女に浮気してフィリピンに飛ばされかけた唐沢直哉に、同情にも似た発言をされた。 「人の心配してる場合?身の振り方ちゃんと考えてるの?」 唐沢直哉は、なんとなく寂しげで。比嘉結菜を見るその顔は失恋にも似た表情で。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加