別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「そんなに好き?比嘉結菜。」 「澤木さんて無神経ですね。」 なんだ、コイツ。センチメンタルジャーニーか。お前なんかな、今すぐ杉田夕実の前に突き出しても良いんだからな? 杉田夕実からお前の捜索、依頼されてるし。 「ゆいちゃんのことは好きです。幸せにしてあげたい。」 お前、2000万円も借金あるんですけど。これから自己破産手続きするけど、財産ほぼほぼなくなるんですけど。 「直くんさ、自分自身のことはどうしたいの?」 「……。」 唐沢直哉は成り行き任せに生きてきたタイプ。 女と出会えばすぐにいたしちゃうタイプ。 ギャンブルで損しようがお構い無し。金は借りれば湯水のように湧き出るって思ってるアホ。 ギャンブル癖は俺の知り合いの元ヤクザから心療内科を教えてもらって通院して治療することになったが、自己破産後の社会復帰については唐沢直哉自身にプランがない。 「杉田夕実とは、離婚するの?」 「…はい。」 「仕事はどうする気?」 「今の会社、辞めます。こんな職場無理です。」 「…ああ。うん。そうね。」 社内で平気でいたす種族とは俺も仕事したくない。 てか、なんで俺がこんなこと聞いてあげてんの……。思わずため息を吐く。 唐沢直哉も、俺につられたのかため息をついた。 「なんか俺……。」 「ん?」 「俺って…クソみたいですね。」 君は最初からずっとクソだしクズだよ。今更気づいたの? 「こんな、コソコソ隠れて。ギャブル癖のために心療内科でカウンセリング受けて。なんかヤバいやつみたいじゃないですか。 それに、気持ち悪い女に嵌められて……。自分の子どもじゃないのに親にさせられて…。 あのババァといるとしんどかった。けばくて化粧品臭くて、吐き気止まんなかった。」 気持ち悪い女イコール、ババァイコール杉田夕実なのかな。関係は修復不可だなこれは。 「……っ。はぁ…っ。グっ……っ。」 「おい?泣いてんの?」   唐沢直哉が顔を両手で覆って、浅く息をしている。 肩が上下するから精神的に追い込まれているとわかる。
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