別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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比嘉結菜が篠木由治と知り合ったのは9年前だ。親の借金の返済のために杉田夕実の下で働いていたころ。 中絶手術に、性病に…比嘉結菜は杉田夕実にボロボロにされ金を巻き上げられ捨てられた。それを拾ったのが篠木由治。 愛人というより、命の恩人に近い。 ヤクザとはいえ義理と人情で拾った瀕死の生き物に自分の欲だけで手をかけるとは考えにくい……。 比嘉結菜のランジェリーショップは、裏で深池組と繋がりがあるラゲット不動産が賃貸借契約をしているビルに入っている。 テナント契約は、篠木由治が代表取締役社長となっているポンドホームズ名義で行っている。 篠木由治は、比嘉結菜を愛人にし囲っているというより、養っているのではないか? 妹の数原梅乃まで従業員として雇っている。 なぜ、妹まで? そもそも、篠木由治は比嘉結菜をたまたま拾ったのか? 杉田夕実に比嘉結菜がボロ雑巾にされる以前から比嘉結菜と篠木由治は家族ぐるみで付き合いがあるってことなんじゃないか……。 だとすれば篠木由治は杉田夕実に対し、深池組の島を荒らしたことよりも、比嘉結菜(数原幸乃)を騙して地獄に突き落としたことをきっちり認めさせ落とし枚をつけさせたいんじゃないか。 だが、杉田夕実は比嘉結菜を自分が捨てた数原幸乃だとは全く気づいていない。 篠木由治が唐沢直哉をフィリピンに行かせようとしたのは、直哉を行方不明にし杉田夕実に借金の返済責任を押し付ければ近づきやすくなるから……。 「直くん。」 「……はい。」 「比嘉結菜のこと、……もっと調べようか?」 唐沢直哉は体を縮こまらせて小刻みに震えながら声を振り絞って 「……“パパ”との気持ち悪い写真撮っても俺に見せないでください。」 それから体育座りになって自分の膝に顔を埋めた。 「……俺ゆいちゃんにだけは幻滅したくないです。」 おやおや。随分と、入れ込んでるのね……。 「絶対…。」 ん? 「白であって欲しい……。」 あーあ。どの口がそれ言ってんのよ。 それで比嘉結菜が、白であろうと。唐沢直哉と比嘉結菜が普通の恋人になどなれないのだが。
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