別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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比嘉結菜が、数原幸乃から名前を変えたのは16の時。顔まで変えたのは杉田夕実への復讐心からだった。 新沼の店は当時、深池組と繋がりがあり上納金を回収しに来ていたのが篠木由治だったのだ。 新沼の待機所で数原幸乃を見た篠木由治は、新沼を締め上げようとした。 数原夫妻が借金をしていたのは、他でもないアンゼンローンだ。板金工場を経営していた数原夫妻、不況の煽りから工場の経営が悪化。銀行からの融資も打ち切られ、アンゼンローンに手を出した。 当時、取り立てを担当していたのが篠木由治で、数原幸乃には幾度も会っていた。 頃合いを見て、ホステスに育て上げようとしていたのだ。 数原幸乃は頭がきれる。しかし、それをひけらかすこともない賢い女で男を操れるタイプだと篠木由治の勘が働いた。 財界や政界のトップを相手にする高級クラブに入れ利用価値を高めようとしていたのだ。 そんな幸乃が借金返済を思案し、己の快楽しか得ようとしない頭の悪い男の静液を絞るだけの性風俗店に身を置いているのが許せなかった。 おまけに幸乃はその頃、誰の子かわからない子を子宮で育てていた。 悪阻もひどい上に、掛け持ちをしている性風俗店で性病を移されていた。金がなく、病院にも行けない状態。 新沼に問いただせば、斡旋業者は杉田夕実だと教えらた。 篠木由治が、他人に情けをかけたのは後にも先もこの1回で。組の人間には、将来の愛人などと揶揄されたが、数原幸乃に自分が手を出そうなど微塵の思いもなかったのだ。 数原夫妻はその後、幸乃・梅乃姉妹を置いて逃亡。篠木由治が文字通り姉妹の世話をすることになったのだ。 数原幸乃は、高校へは進まなかった。梅乃は、両親の逃亡のショックから引きこもりになった。 何もかも失った姉妹に残ったのは杉田夕実への復讐心だった。
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