別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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三度目の浮気現場。ホテルは毎回同じ場所。 写真を見せると、やはり杉田夕実は泣き崩れた。 「別れたい」と言いつつも、それなりにショックなのだろう。 「澤木さん、なんなんですか。これ。」 唐沢直哉と比嘉結菜のベロチュー写真だ。 「こんなもの、見せないでください。」 証拠だ。仕方がない。 「吐きそうです。」 吐けば良い。 「気持ち悪い…最低、最悪。」 杉田夕実が俺を睨みつけてくる。 悪いのは、俺じゃない。 「死ねばいいのに。…死ねばいいのにぃ。…死ねばいいのにぃいっっ!!」 そうね。死ねばいいのに。 杉田夕実が体を震わせて怒りを露わにする。 それを見ながら、ふと思い出す。 「てかさー。地獄に落とすって言ってたよね。コイツらのこと。」 杉田夕実が顔を上げた。 「杉ちゃんは、唐沢と別れたいんだよね?」 「……そうだった。別れたいのに、悔しいなんて…。」 杉田夕実が我に帰る。 俺は別に杉田夕実に親身になる気はさらさら無い。このまま泣きながら居座られても陰気な空気で部屋が満たされるだけで嫌な気分になってくる。 帰って欲しい気持ちをひた隠しにしながら、杉田夕実に表向き前向きな言葉をかけた。 「唐沢直哉と別れて新しい出会いを探しなよ。悔しいって思ってる時間無駄でしょ。別れない選択肢は無いはずだろ。」 俺の分のコーヒーのおかわりを淹れようと立ち上がる。 「……澤木さん。私が知らない直哉の弱みってないんですか……。」 「…え?」 「会社にいられなくしてやりたいです。」 「……。」 「直哉は私の後輩で、席も近いので、毎日顔を合わせます。」 杉田夕実が会社を辞める選択はさらさらないようだ。
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