別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「夕実、大丈夫なの?」 夕実は、ドアを開けた人物に対し驚きを隠せなかった。 「……何よ?何?なんなの!?」 声を荒げベッドから飛び出し点滴の針が抜けでも気にせず窓際まで身を寄せた。 「だって、夕実、倒れて救急車で運ばれたって。」 そこにいるのは、会いたくもない両親。 「だから、なんなのよ!!なんでここにいるのよ!!」 夕実は、10数年ぶりに見た両親を睨みつけ、そばにあった丸イスを振り回した。 「連絡が来たのよ。病院から。ずっと、心配してたの。夕実は頑張り屋だから1人でずっと仕事も頑張りすぎてるんじゃないかしらって。 夕実、結婚したんだってね。知らなかったわ。旦那さんが仕事で忙しくて連絡がつかないみたいで。すごいわね、働き者の旦那さんなのね。」 母は、ベッドひとつ挟んでその様子を見ながら夕実に向かってつらつらと言葉を発している。 これが幻聴や幻視ならどれほど良かっただろう。 目の前に両親がいるのは現実だ。タバコ臭い父の匂い。香水のきつい母の匂い。嗅覚が本能がこの人物たちを拒否している。
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