別れたい女たち 〜恋は愚か愛は憎しみと紙一重〜

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「うるさい!うるさい!うるさい!!なんなの、今更、私のことなんかほっときなさいよ!!帰ってよ!帰って!!帰ってったら!!!」 丸イスを投げ飛ばすが、両親に当たることはなかった。 「今更、何の用なの!?」 もうひとつの丸イスに手をかける。 「夕実。流産したのよね?旦那さんが気の毒だわ。夕実がしっかりしてないからこうなったのよ。」 無神経な母の一言に、夕実の中の何かが壊れた。 ーーーほんと、世の中バカしかいない。 夕実が何も言っていないのに。母親はイスを拾って置き直しそこに父を座らせた。 「夕実。体、冷やしたんじゃない?お酒飲んだりしたんでしょ。あなた昔から我慢が足りないから。赤ちゃんも可哀想だったわね。全部あなたのせいよ。母親になる資格が無かったのよ。その子も生まれてこなくて良かったんじゃない。」 夕実は、散々な言われようだと思った。 こんなバカな女が自分の母親だなんて。そもそも血も繋がっていないのに。何をもっともらしいことを言っているのだろうと。 「私は、そんなことを言われて何を言えばいいのよ。あなたに謝ればいいの?」 「何言ってるの?夕実。お母さん心配して来たのよ?お父さんだって。」 ーーー心配?これが?笑わせないでよ。 少し離れた場所から病院に駆けつけた夕実の両親は、“来てやったんだから”とでも言わんばかりだった。 「あなたは、雄次の子育て失敗したじゃない。今も、部屋から出てこないんでしょ? 雄次に相手にされないからって、私に話し相手になって欲しいの?」 「何それ?夕実、誰に向かってそんな口きいて」 「本当に心配ならその顔二度と見せないで!!吐き気がするのよ!!!」 夕実にとっては、両親は毒親だ。 全てが弟優先だった。家族と一緒にいて夕実が満足できることなどひとつもなかった。 そんな親に子どもを亡くしたことまでとやかく言われたくなかったのだ。もちろん、心配などという都合のいい言葉で母親面もしてほしくもないし、聞きたくもない小言も言われたくなかった。 「夕実、あなた一度精神科に診てもらったら?何か気狂い(きちがい)にでもなったんじゃない。」
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